人間社会と同じように、地球上のすべての生物は、他の生物との相互関係の中で生きています。農作物の生産の場である田畑も同じ。そこに生を育む小動物や微生物の力を借りて、また時には戦いを挑まれつつ、植物は生長していきます。
生態環境改良材は、このような微生物と植物の有益な相互作用の場を構築することで、作物の生長を促進するとともに、植物病原菌に対する静菌作用や硝酸態窒素低減効果、水質浄化作用・堆肥熟成効果などの、栽培環境を整えるための機能性を発揮します。
硝酸態窒素低減効果
左のグラフは、本資材施用土壌で実験植物(シロイヌナズナ)を生育させた時の、土壌中の硝酸態窒素濃度の差異を示したものです。資材の濃度に依存した、硝酸態窒素低減効果がみられます。また作物中への硝酸態窒素の蓄積についても、大幅に抑制されることが研究で明らかになりました。
近年、JECFA(FAOとWHOの合同専門会議)による規定では、作物中の硝酸濃度は低く定められていますが、これまでの農業は硝酸系化学肥料による多施用−多収型の栽培形態であったため、作物の低硝酸化は困難とされていました。一方、好熱性微生物群を用いた最新の栽培技術を活用すると、作物の低硝酸化とともに抗酸化成分などを豊富にし、肥料の使用量低減と増収との両立が可能となります。
植物病原菌に対する静菌作用
フザリウム属菌は、広範な植物に対する病原性を持っていて、トマト萎凋病、ウリ科のつる割病、イチゴ萎黄病、カボチャ立枯病などの病気を引き起こし、時に甚大な被害をもたらします。左写真から、本資材がシャーレ上のフザリウム菌の生育に対する阻止円を形成し、抗菌効果を発揮していることが確認できます。このような「静菌作用」は、本資材を施用した栽培現場においても広く認められています。
資材中に含まれる好熱菌が造り出す耐熱性の酵素や機能性分子は、その化学構造が非常に安定であるため、熱や酸化剤に強いという性質を持ち、土壌中においてもその活性が長時間にわたり持続します。すなわち、生態環境改良材は、農薬等に汚染された劣悪な土壌であっても、力強く、その生態環境を修復していきます。
次世代アグリ技術の研究成果の一例
好熱性微生物群が土壌や作物にもたらす効能の作用機序については、DNAマイクロアレイ等の最新の遺伝子発現解析手法を用いた研究が現在進められています。